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ケダモノの王2 ~ショタアレルヤ輸送艦での日々より~

彼は様々な風景をアレルヤに聞かせてくれたが、とりわけ彼自身がお気に入りだったのは、サバンナと呼ばれる、地球に存在する荒野だった。
「アフリカの草原はね、獣たちの王国なんだ…!電気自動車より速く走るチーター、施設の部屋なんかに収まりきらない位大きいゾウ、スゴい動物達が一杯なんだ…!」
そう話す彼は、本当に楽しそうだった。瞳をキラキラさせながら、まだ見ぬ楽園を語り続けた。
「でも、本当にスゴイのは百獣の王、ライオンさ…力強くて、群れを守るためには、命をかけて戦う…!」
そんな所が自分の憧れなのだ、と彼は語った。いつか一緒に見に行こう、とも
叶わないと知ってはいても、その物語は、アレルヤの胸に力強いライオンを夢見させるに充分な物だった。

「アレルヤ…知ってるかい?ライオンが、死んだ後の話…」
「…え?」
「ライオンはね…群れに良く貢献した仲間を、皆で分け合って食べるんだってさ。そうやって、失われた仲間を、自分達の中で永遠に生かすんだって…」
…彼の眼は、真っ直ぐにアレルヤを見つめていた。
「………僕も、」
食べてくれないか?そう眼が語りかけた瞬間、アレルヤは走り出し、部屋を駆け出していた。
あぁ、なぜって…彼の意思を理解した時、もう一人の自分が、こう告げたのだ。
―――なるほど、確かにそりゃあ名案だぜ―――と…

―――アレルヤさんよ、良いじゃねぇかよ?ヤロウが良いって言ってんだから―――
「馬鹿を言わないでくれ…!そ、そんな…獣みたいな事…!」
―――ケダモノケッコー、死ぬより良いだろ?それがアイツの望みなんだから―――
「やめろ、やめてくれ!第一、彼が死ぬなんて…嫌だ…!」
―――でもアイツ死ぬぜぇ?ほっといても。俺がわかって、お前にわかんねぇワケねぇだろ?―――
「僕の食料を分けるよ、看病だって今より増やす。絶対に死なせはしない…!」
―――今のいっぱいいっぱいの状況で?おいおい、俺等が死ぬぜぇ…?―――
「それでも良いよ…!彼を殺すより、その方が何倍も良い!!」
―――…ざけんなコラ、俺が許すと思ってんのか…?―――
「従わないなら、この銃で死ぬ…!絶対に譲らないからな!」
―――ハァ、しょうがねぇな…なら妥協案と行こうぜ…チキンレースだ―――
「チキン、レース…?」
―――お前はお望み通りの生活をする。俺はそれを邪魔しねぇ…お前の体をモニタするだけだ―――
―――ただ、俺も死ぬわけにゃいかねぇ…お前の体がもう限界だって時、お前の意識が途切れて、後はオダブツを待つだけだ…って時は、俺に体を譲る―――
「…良いよ、それで…!」
―――ははは…オッケーオッケー、精々頑張るんだなァ―――

「………んっ」
アレルヤはハッと気が付いた。看病をしている内に眠りかけていたらしい。
「…いけないいけない」
しっかりしないと、と思う。まだ先は長い、これから救助が来るまでを、彼と一緒に生き抜かないといけないのだから。
彼はもう喋る事も無くなったが、まだ息はあった。
彼も頑張っているのだから、自分も頑張らなければ…!

…年若いアレルヤは、まだ知らない。
本当にいけない時ほど、人は、自分を鼓舞する事を繰り返したがる事を。
日常作業、連日の看病…その全てを空腹の中でこなすアレルヤは、心身共に憔悴しきっていた。
少年達は信用できない。冷たい艦内での、いつ終わるともしれない孤独な戦い。
気力だけで持ちこたえる体は、徐々に、意識を途切れさせていった…

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